日本が新しい時代「令和」を迎え1年が経ったが、この間には非常にたくさんの出来事が起こった。日本の大手銀行は、新型コロナウイルスの世界的な流行の影響に立ち向かう個人消費者や中小企業に支援を提供する一方、顧客にデジタル化されたサービスを提供し、業務効率を高め、新たな収益源を確保するためにデジタルトランスフォーメーションを速やかに実現する必要性にも迫られている。マイナスに陥りそうな金利と深刻な景気後退に対する不安が重なって状況が悪化しており、この変革の実現は更に、差し迫った課題となっている。

私はデジタルバンキングとフィンテック業界を長年追ってきたが、日本もついにデジタル化に目覚めようとしていることを示す興味深い流れが起きていることが最近判明した。

第一歩は電子決済の導入促進。

日本の銀行はこれまで主にATMの便利さで顧客を惹きつけてきたが、脱現金が進むと、パーソナライズされたデジタルなサービスの利便性で勝負することになる。電子決済の普及を図るため、日本のメガバンクはデジタルウォレットサービスに投資するだけではなく、一層オープンなアプローチを採用しつつある。三菱UFJ銀行(MUFG)はAkamaiと共同で、ブロックチェーン技術を基盤とした高速で安全な電子決済を世界中のどこからでも可能にするオープンなペイメントネットワークを提供する予定である。三井住友銀行(SMBC)は2019年の統合報告書の中で、「have a good cashless(いいキャッシュレス)」なソリューションを構築する取り組みについて明らかにした。この取り組みではVisa、GMOと共同でオムニチャネル電子決済プラットフォームを構築し、複数の決済手段や外部事業者にワンストップで対応できるようにする。

デジタルは第一優先事項。

3メガバンクすべてがチーフ・デジタル・トランスフォーメーション・オフィサー(CDTO)のポストを設置している。MUFGでは今年、前CDTOを新たなCEOに任命した。これは、デジタルトランスフォーメーションとイノベーションが優先事項であることを示している。また3メガバンクはイノベーションラボを新設し、各行のCDTOがこれらのラボやベンチャー企業の責任者を務めている。

銀行とフィンテック関連のスタートアップ企業との提携。

MUFGは個人資産管理サービスを提供する人気フィンテック企業のマネーツリーに戦略的出資を行った。これによりMUFG Nicosアプリユーザーは、AIを活用したマネーツリーの金融インフラプラットフォームを使用して、請求額やポイント残高を簡単に確認できる。SMBCは2019年、ブロックチェーン関連のスタートアップ企業であるR3と協業し、貿易取引に必要な紙ベースの書類確認と審査処理を合理化するMarco Poloの実証実験を実施した。今後デジタルトランスフォーメーションが推進されていくことを示唆する良い兆候は見られるが、日本の銀行文化は保守的で意思決定の手続きも煩雑であることから、こうした協業プロジェクトの動きが鈍化される懸念がある。

銀行はAIと自動化を活用。

現代社会の事情を鑑みると、銀行はコスト削減と業務効率化を図らざるを得ない。そこでこうした目的を達成するために、メガバンクはエマージングテクノロジーを活用しつつある。みずほ銀行は、AI、光学文字認識技術、RPAを活用した「AOR」ソリューションを開発した。これにより、バックオフィス業務が効率化されることになる。MUFGはAIによる住宅ローンのかんたん事前審査サービスを開始した。審査の申し込みは24時間いつでも可能で、これまで人が行っていた信用分析をAIが行うことで事務手続きが半減し、審査に要する時間も数日から十数分へと大幅に短縮される。

規制当局はオープンバンキングでのデジタルトランスフォーメーションを奨励。

日本の銀行を監督する金融庁は2017年、オープンバンキングを推進するために同国の銀行法を改正した。また、金融庁は日本の銀行に対し、2020年末までにオープンAPIに関する方針を公表すること、少なくとも1つの外部事業者と契約することも求めている。しかし、金融庁が明確な基準を示していないため、銀行の変革を促すこのせっかくのよい機会は無駄に終わるかもしれない。たとえば、銀行のデータを使用する際に外部事業者は手数料を負担すべきかどうかについて、銀行と外部事業者の意見は依然として対立したままである。そのため、日本の登録銀行140行のうち130行が2020年半ばまでにAPIの公開を予定しているというが、まだその期限内に重要な発表は出されていない。

今年の夏、Forresterは一連のオープンバンキングに関するグローバルリサーチの一環として、日本のオープンバンキングの状況に関する新たなリサーチを開始し、日本の銀行、外部事業者、規制当局が直面する喫緊の課題について調査中です。このリサーチへの参加をご希望、または日本の銀行のデジタルおよびオープンバンキングトランスフォーメーションの推進を支援する革新的なソリューションをお持ちの場合はmliu@forrester.comまで遠慮なくご連絡ください。Please note this is the Japanese translated version of the original blog.